QuickAGENTによって、どういった問題を解決することができるのでしょうか?また、このサービスにはどんな社会的意義がありますか?
テックビズに参画する以前、元請けの立場で仕事をしていた時期があるのですが、そこで多重下請け構造の問題を当事者として目の当たりにしました。一つ例を挙げるとするならば、商流内に介在することでコミュニケーションを複雑化し、現場の成果に悪影響を及ぼすような企業の存在です。「エンジニア本人と直接話せれば10分で済む確認が、間に何社も挟まることで何日もかかる」ーーそういう場面を何度も見てきました。
これは一人のプレイヤーが悪いという話ではなく、業界全体の構造の問題だと考えています。しかしながら、構造の問題だからといって放置していい話ではありません。
間に入っている企業の分だけマージンが抜かれてエンジニアの単価が下がり、情報も歪んで伝わる。このような“関わる企業や人に大きなデメリットのある仕組み”が温存され続けている状況に、強い違和感を持つようになりました。QuickAGENTの構想は、その原体験から始まっています。
このサービスを活用していただくことで、たとえば企業側であれば単価を抑えながら良い人材をスピーディーに確保できるようになり、提案側であればより良い単価での受注を期待できます。とくに、実務面・条件面・コミュニケーション面などにおいて、これまでの業界構造の中では感じられなかったメリットを実感していただけると信じています。
既存の手段(他社サービス・従来のやり方)では、なぜうまくいかなかったのでしょうか?
そもそもSES業界においては、案件(※)の情報や人材情報を一元化している場所がなく、各社が個別に抱え込んでいるのが実情です。
商流の上位にいる企業ほど良い案件を持っている傾向にありますが、それを誰にでも流すと自社の取り分が薄くなるので、信頼できる取引先にしか出さない。
対するエージェント企業側も、自社のエンジニア情報をむやみに開示しない。お互いに情報を閉じているので、案件と人材を引き合わせるには、間に人が立って一件ずつ電話やメールで突き合わせるしか方法がありませんでした。業界で「足で稼ぐSES営業」が基本形になっているのは、これが理由です。
このスタイル自体は、情報が分散している前提の中では合理的に機能してきました。商流が一段や二段あること自体は、各社が役割を持って案件を流通させているという意味で、必ずしも悪いものではありません。問題は、情報を限られた相手にしか出さないという構造ゆえに、案件が三次・四次受けと過度に深い階層まで降りていきやすい点です。その過程で当初の条件や背景情報が削れたり歪んだりしてしまい、最終的に現場に近い企業に届く頃には、もはや原型をとどめていないこともあります。当然ながら、マージンも階層の数だけ抜かれていくーーこれが多重下請け構造の中で起きている本質的な問題です。
繰り返しになりますが、これはSES企業が悪いという話ではありません。情報が分散していて、各社が個別に営業活動で集めるしかないという前提があるため、このような構造になっているわけです。
長年積み重ねられてきた商習慣の上に現在のやり方が成り立っていて、個社の努力ではなかなか打ち崩せない。むしろ真面目に商習慣に従って仕事をしている企業ほど、この構造から抜け出しづらいというのが実態です。
だからこそ、個別の企業努力ではなく、プラットフォームという別のレイヤーで「情報が一元化された場所」を作り、構造そのものを作り直す必要があると考えました。既存のサービスの延長線上で解ける問題ではないと判断した、というのが正直なところです。
このサービスを設計するうえで、最も時間をかけて考えたことやこだわりは何でしたか?
エージェント企業様と案件企業様がストレスなくマッチングできる「UX設計」です。それに紐づいて、「プラットフォーム側で商流を一部制御する仕組み」にも時間をかけました。
UXについては、SES営業の現場で「明日提案する」というスピード感が当たり前であることを前提に、登録から提案、面談調整までの動線を徹底的に短くしました。ただ早ければいいというものでもなくて、判断に必要な情報がきちんと整理されて届くことも大事です。「スピード」と「情報の質」を両立させる落としどころを探るのに、一番時間をかけたかもしれません。
また、エージェント企業様が「登録した翌日に提案できる」状態を、何があっても守ることも大切にしています。SES営業の現場は、良い案件の情報が手に入ってから提案までのスピードがそのまま成約率に直結する世界でもあるため、一日遅れると候補者は他社で決まってしまうこともあります。だからUIの導線設計はもちろん、情報の鮮度、面談調整チャットのレスポンス、すべてを「明日の提案に間に合うか」という基準で判断しています。
これはエージェント企業様だけの話ではなく、案件企業様にとっても同じだと考えています。良いエンジニアの提案が早く届くことや、面談調整がチャットで完結することは、採用側の体験を改善することでもあります。従来の商流だと、案件企業に提案が届くまでに複数社を経由して情報が複雑化したり、調整に何日もかかったりしますが、その摩擦を両側から削っていくことが、結果としてマッチングの質を上げると考えています。
今後、このサービスをどんな方向に育てていきたいですか?また、どんな企業・担当者に使ってほしいですか?
QuickAGENTを、SES業界における健全な商流の標準にしていきたいと考えています。
現状の多重下請け構造は、誰か一社が悪いわけではなく、業界全体の商習慣として積み重なってきたものです。だからこそ、それを変えるには「こちらのやり方のほうが合理的で、結果として皆が得をする」と思っていただける選択肢を用意し続けるしかないと思っています。
エージェント企業様には、発注元の事業会社との直接取引を増やしたい、自社のエンジニアにより良い案件を提案したいと考えている方に使っていただきたいです。特に、これまで商流の制約で大手の案件にアクセスできなかった中小規模の企業様や、設立間もない企業様にこそ価値を感じていただけると思います。
一方で、案件企業様にとっても、QuickAGENTは「信頼できるエージェント企業から、直接、質の高い人材提案が届く」場であってほしいと思っています。多重下請けを経由しないことで、エンジニアの情報も鮮度高く正確に届きますし、契約もシンプルになる。採用側の「良い人を早く採りたい」というニーズと、エージェント側の「良い案件に直接提案したい」というニーズは、本来同じ方向を向いているはずです。従来の構造では噛み合いづらかったその部分を噛み合わせるのが、QuickAGENTの役割だと考えています。
(※)具体的な目的・納期・予算を持つ業務(プロジェクト)のこと。本インタビューにおいては、主にSES業界のものを指している